さっぽろの市電延伸を考えるキャンペーン
(「でんまが」は市電延伸に疑問を呈します!!)

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■札幌駅前通中心部、自転車走行は事実上不可能に (15.09)
 市電のサイド方式ループ化で、秋元市長も認識示す
 札幌駅前通の南1条—ススキノ間で市電の軌道敷設工事が進んでいる。年内にこの区間が結ばれ、サイドリザベーション方式でのループ化が実現する。これにより、そこを自転車で通行する市民にとっては、きわめて危険な状況となり、事実上走行不可能と言っていい。
 秋元克弘札幌市長は9月1日付けでfacebookに、自転車押し歩き街頭啓発の開始式に出席したことを記述している。文中に「改めて自転車は法律上、軽車両ということを知っていただきー云々」とある。
 9月8日の定例記者会見で、ループ化区間の市電軌道が道路の外側、つまり歩道ぎりぎりを走るサイドリザベーション方式になることで、自転車走行について質問が出た。自転車は市電と車の間を走行する形になり、自転車が走れる幅を確保できるかどうか不明で、安全に不安を持つ市民が多い。市は歩道での押し歩きを推奨するが、一方で自転車の利用を奨励していることと矛盾があるが、どう考えるか、というものだった。
 秋元市長は「自転車の走行環境という意味では非常に難しい。(自転車と車の間に)何らかの物理的な境目を作るというようなことも、非常に走行上危険。(当該区間に)自転車を快適に利用できるという環境が、今、提供できていないというのは事実かなと思う。丁目を変えて走っていただく、やむを得ず駅前通を使う場合は、歩道上を押し歩きしていただけないか、そういう形でスタートさせていただきたい」と答えた。
 市電ループ化がサイド方式で行われる限りはそのようなことになる。ただ、自転車の問題も確かに市電のサイド方式ループ化による弊害だが、中心部市街地での自転車利用者は基本的には健康で活動的な市民だ。市長の言うようなちょっとした対応もやむを得ない、かもしれない。もちろん自転車愛好者には「冗談ではない」かもしれない。法律上軽車両である自転車で、道路交通法に従って車道左端走行を「強行?」する人もいるかもしれない。
 それよりも、市電の利用が困難なお年寄り、しょうがい者、妊婦などの弱者がメーンストリートでタクシーや乗用車の乗降が出来ないことがもっと大きな問題だ。荷捌きが東西の通りの指定場所に限定されることによる、従事する人たち(全員が元気いっぱいとは限らない)の現在以上の労働強化、時間ロスなどの問題もある。市が企業に超過勤務手当を補償するはずもない。
 先の記者会見で秋元市長は、タクシーの利用とか荷さばきなど、車の利用がしづらいことについて、「人を中心として物を考えるか、車の利用を重点として考えるかということからすると、高齢社会などを見据えたときに、人に優しいまちづくりを目指したいという意味だったのかなと思う」と話した。しかし、車の利用が不便だということは、つまるところ人に優しくない、ということだ。
 サイド方式で中心街の市電停留所の3カ所だけは乗り降りしやすくなるのだろう。しかし、その乗り降りの安楽さが身にしみてありがたいと思う向きは、別な停留所から乗り込む苦痛を避けて、市電を利用しない。中心部だけが安楽であることにはさほど意味がない。それでも中心街へ出かける人は車で送り迎えしてもらうか、タクシー利用になる。そういう人たちに優しくないのが市電のサイド方式ループ化だ。
 さらに言えば、市電が歩道ぎりぎりを走ることの危険性も心配だ。歩道との境目に景観を阻害するような頑丈なフェンスを設置するのかと思っていたら、ちょっとした植え込みを置く程度の区切り方という。歩行者は予想もつかない行動をすることがあり得る、と自動車教習所で教えられる。酔っぱらい、子供、病人、しょうがい者、悪意のある者などの突発的行動で、市電に接触する可能性が排除されていない。十分予測できることであり、いざ事故になった場合、「想定外の事象」の逃げ口上は通用しないことを、市は肝に銘じておくべきだ。

■自転車愛する市民団体、市長選は残念な結果? (15.04)
 当選・秋元克広氏、アンケートに冷たい回答
 札幌市電のループ化後も自転車が安全走行できるようアピールしている市民団体が、先の札幌市長選挙・市議会議員選挙に向け、この課題に対する各候補のアンケートをまとめて、公表していた。
 札幌都心部の自転車走行について活動している市民団体は「道はだれのもの?札幌21」。市電のループ化は、駅前通の南1条―南4条間で電車が車道外側(=歩道側)を走るサイドリノベーション方式を採用。その場合、道路交通法で車道左端を走る自転車は、軌道より道路中央側の車道を走ることとなる。それでは危険だとして「札幌21」は軌道と歩道の間に自転車走行帯を設置するよう求めて陳情していた。昨年11月、市議会で論議したが、継続審議となった。
 そこで「札幌21」は市長・市議選にあたり、各候補にアンケートを行った。「札幌市民の皆様の投票において、検討材料の一つにして頂ければ」との趣旨だ。
 そのうち市長候補の回答は、ループ化について秋元克広氏「賛成」、本間奈々氏「よく検証する必要がある」、サイドリザベーション方式について秋元氏「賛成」、本間氏「反対」、札幌都心部の自転車走行について、秋元克広氏は「問題がある」、本間奈々氏は「問題がない」、市電ループ化後札幌市が主張する札幌駅前通の自転車推し歩きについては、秋元氏「問題はある」、本間氏「問題はない」、自転車走行帯敷設については秋元氏「反対」、本間氏「賛成」だった。
 まとめると秋元氏は「ループ化・サイドリノベーションに賛成、都心部の自転車走行には問題があり、市電ループ化後推し歩くことは問題、しかし自転車レーン敷設には反対」。本間氏は「ループ化は検証が必要、サイドリザベーションに反対、都心部の自転車走行には問題がない、ループ化後の押し歩きは問題がない、自転車レーンの敷設に賛成」となる。他の市長選候補の回答については、この記事では割愛した。「札幌21」にとっては、市長候補の中では本間氏の回答が好ましかったようだ。
 秋元氏が当選、5月2日に市長に就任する。自転車を愛する市民は、サイドリノベーション方式の市電ループ化が開通すると、市電軌道より道路中央側を走るか、市長から厭がられながら歩道を推し歩くことになる。
 路盤工事などが進む市電ループ化工事のうち、残る軌道敷設については市は3月25日に札建工業と随意契約を結んだ。3月5日以降一般競争入札が予定価格を上回り3度不調となったため、入札に唯一参加していた同社と2億8890万円で随意契約したもの。開通は今年10〜12月。ループ化総事業費は29億5000万円で、当初計画を4億7000万円上回る見通し。そのうち、開業遅れによる増額は6900万円。業界には当初から、軌道敷設という特殊工事を担当出来るのは札建工業が第一本命、という見方が支配的だった。

■市電ループ化、市民団体らが「自転車の安全」陳情 (14.12)
 札幌市聞く耳なし、「危険性認識なかった」とは言わせない
 12月6日、北海道新聞札幌市内版の「記者日記」欄に「自転車、安心して乗りたい」という記事が掲載された。「走行中の路面電車(市電)と車の間を自転車で走るのは怖くないですか?」と書き出している。
 ーー札幌市は2015年10〜12月開通予定の市電西4丁目ーすすきのについて、電車が走る軌道を歩道に沿って車道の左端に建設する。原則として車道左端を走行することになっている自転車は、電車と車に挟まれて走ることになる。市は軌道部分を着色するなどの安全対策を検討しているが、自転車の走行幅をどの程度確保できるかは「分からない」としている。安全のため歩道での自転車の押し歩きも推奨するという。だが、今でもルールを守らない自転車は多く、歩行者との接触事故は後を絶たない。
 この問題をめぐっては先月、市民団体が、軌道を車道側にずらし、歩道と軌道の間に自転車走行帯をつくるよう市議会に陳情した。市議からは歩道や中央分離帯に自転車走行帯を設ける提案もあったが、市は否定的。市自転車利用総合計画は「自転車が安心・安全に利用できる道路を整備する」とうたっている。今回の市の対応はこうした方針に即しているのか疑問だーーというのが記事内容。
 記事の言わんとするところは、全くそのとおり。ただ、掲載タイミングが余りにも遅すぎたのが残念だ。市電のループ化・延伸はすでに路盤関連工事に着手しており、歩道ぎりぎりに軌道を敷設する規定方針で動いている。今から工事をやりなおすのなら、サイドリザベーション自体をやめて、中央軌道方式にするべきだ。上田文雄市長や市当局にはそんな考えは全くない。従って、いま軌道をずらせ、という論議は市政をよほど荒治療しない限り前には進まないのだ。もちろん、「でんまが」はその「荒治療」を強く望んでいる。
 しかし、市民団体や新聞記者がいま「自転車の安全走行」を口(記事)にするのは歯がゆすぎる。市電ループ化の問題性、危険性は自転車についてだけではない。自転車を利用する人たちは、どちらかと言えば健康や体力に恵まれている。その人たちは、自らのことに加え、もっと弱者にとってループ化がどんなマイナスをもたらすのか、もう少し早くから想像力を働かせて、立ち上がり、行動してほしかった。もちろん、今からでも発言し続けることを多いに歓迎したい。       
 ループ化開通後、もしも不幸にして市電に関係する事故が起きた場合、「多くの市民から危険性を指摘されていたにも拘らず、上田市長がサイド方式を強行した」と言える「状況証拠」をできるだけ多くつくっておきたい。「危険性を認識していなかった」とは言わせない。場合によっては「でんまが」が刑事告発する。

■札幌市電のループ化延伸、年度内に発注完了へ (14.11)
 サイドリザベーション強行、事故・災害の責任は?
 本来は来春開通のはずだった札幌の市電ループ化延伸。度重なる入札不調で大幅にずれ込んで、現在の予定は2015年10月〜12月とされる。紆余曲折の結果、既に軌道敷の路盤整備が発注されているが、一旦中止してでも事業を見直すべき、という声もある。しかし、市は道路の歩道側走行方式によるループ化に拘泥する上田文雄市長の号令の下、市長任期ぎりぎりの2月までに残る工程を発注する姿勢を貫いている。
 市電のループ化延伸工事を巡っては入札不調が繰り返された。市交通局は東日本大震災の復興需要などによる全国的人手不足の影響、と理由づけしている。詳細は過去の「でんまが」記事を検索できる。工事の一括発注から、分割して発注することで業者が対応しやすくするなどの弥縫策の結果、第1弾の路盤工事については舗道工業に発注した。工期は6月末から12月下旬とされる。
 市電のループ化延伸は西4丁目とススキノの約400メートルを結び、中間の狸小路に停留場を設けるもの。しかし、サイドリザベーションと称して、軌道の上下線を分離して、道路両サイドの歩道側に敷設するため、問題が大きい。歩道との間には簡単な遮蔽しかなく危険性がある、駅前通の商業ビルなどに車両が横付けできずタクシー乗降や荷さばきに不便、その他いろいろだ。ビル火災の場合、歩道そばにできる架線が消防活動の障害にならないのか、という疑問もある。サイドリザベーション方式では熊本市電が国内先進事例だが、札幌は熊本とはかなり事情が違う。危険性が指摘されながら、無視して計画を強行して、実際に事故や災害が発生した場合、誰が責任を取るのか?
 開通予定が大幅にずれ込んだのなら、車道外側の軌道路盤工事が無駄になったとしても、センターリザベーション方式に計画変更すべき、という声もある。来年4月市長選による次の首長に託せばいい。
 しかし、上田文雄市政は年度内に市電ループ化工事発注を完了させようとしている。11月中にレールと枕木を組み合わせる業務と、ループ化のためすすきの停留場を一時移動するための軌道仮説工事を発注する方針。金額にもよるのだろうが、指名競争入札か指名見積もり合わせで業者を決め、開通時期を少しでも早めるという。
 残る工事は、西4丁目ーすすきの間の軌道敷設、狸工事停留場新設、電気関連に分割して2月に発注、3月中の着工を目指す。「年度内にやっつけてしまう」という役所方式だ。「もう一度考え直す」ということをなぜやらないのか、不思議な感覚だ。旗振り役の上田市長は、3期限りで引退する。本人は「(市長在任は)10年、65歳くらいまでが当初からのめどだった」と言っている。であれば、余力を残して2期8年までとするべきだった。10年を超える3期目後半の2年は無駄というものだ。その無駄な2年で、余計なことをやられてはたまらない。
<続報>市電延伸工事の発注は一般競争入札で行うことになった。

■札幌市電ループ化延伸に強まる「見直し論」 (14.09)
 開業予定の遅延、強引に推進した上田文雄市長の引退で
(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 来春開業予定だった札幌市電のループ化延伸が10〜12月にずれ込む。この計画には経済界から反対が強く、強引に推進した上田文雄市長が今季限りで引退することを受けて、見直し論が高まっている。次期市長選候補として秋元克広前市長に出馬要請した「札幌の未来を考える有志の会
」中心メンバーらは、秋元氏に計画変更を求める動き。自民党推薦で出馬する本間奈々氏に対しても同じような要望が寄せられると見られる。
 市電のループ化延伸は、当初札幌市は路盤土木工事と軌道敷設工事などを一括して発注、来春開業を目論んでいた。入札不調が続き、土木工事と軌道敷設を分離して、土木工事を先行させている。続いて軌道敷設工事を発注して、開業を遅れさせない方針だった。しかし、軌道工事の専門技術を持つ業者が限られ、土木と軌道で別々の業者が同時作業で施工することによる不具合も懸念され、結局、土木工事終了後に軌道工事を行うことになった。市の失態と言える。そのため、開業は10〜12月にずれ込む。
 ループ化延伸は上田市長が3期目公約の目玉として強引に進めてきた。その上田市長が今季限りでの引退を表明。それもあって、ループ化を見直すべきだ、とう声が強まっている。市議会議員の中にも、毎年赤字の市電に総額100億円もの巨額資金を投じることへの疑問、駅前通で渋滞が悪化する、道路の歩道側を電車が走るサイドリザベーションの安全性の問題、冬季の除雪に莫大な電力を使うこと、などに反対の声がある。来春の開業が不可能になったのなら、工事を中止すべき、ループ化延伸を続けて、巨額の工事費と毎年の営業赤字が続くよりましだ、という主張も。
 先ごろ副市長を退任して来春市長選に備える態勢にはいった秋元克広氏に出馬要請した経済人グループ「札幌の未来を考える有志の会」の中心メンバーである加藤欣哉氏、紫藤正行氏はともにタクシーや運輸業の経営者。都心部の交通を阻害する市電ループ化には強く反対してきた立場だ。そうした経済人グループは秋元氏の政策具体化について、少なくともサイドドリザベーションの中止を求める。路盤土木工事はサイド方式を前提に進められており、軌道を道路中央に変更すればこれまでの工事が無駄になるが、それでも将来ずっとサイド方式が続くよりはいい、という考え方だ。
 「有志の会」は、実は札幌商工会議所副会頭陣ら経済界中枢メンバーの意向を反映した動きで、水面下の広がりは根強いものがある。その経済人グループが秋元氏の政策具体化の中で、サイド方式取りやめを要請するとなれば、秋元氏にとっても重い課題。対応が注目される。
 札幌市長選は自民党推薦の本間奈々氏と秋元氏の事実上の一騎打ちとなりそうだが、本間氏を支援する側の経済界からも市電ループ化の計画見直しを求める声が上がる可能性がある。もし計画変更になるとすれば、これまでの投資が無駄になる責任が上田市長にあることは明らかだ。

■市電流ループ化、軌道敷設に「随意契約も検討」の怪しさ (14.07)
 役所流理屈でなく、市民の納得するていねいな説明を

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 札幌市電のループ化工事は、3回の入札不調を経て、最終的に路盤工事部分を随意契約で舗道工業に発注。続いて軌道工事部分を6月下旬に入札するはずだったのがずれこんでいる。規定どおり一般競入札をしても、参加業者がなく、不成立になる公算が高いためという。窮余の策として、随意契約も検討するという。そんなイレギュラーなやり方をしてまで、延伸やループ化を急ぐ必然性が疑問だ。
 ループ化は西4丁目ーすすきの間の駅前通約400メートル区間。今年1月に1回目の入札を実施、金額が予定価格上限を上回ったため不調。3月上旬の2回目入札は工事実績などの参加条件を緩和したものの、入札がなかった。
 工事が夜間となり、全国的に建設工事が増加する中、人手不足が深刻で、業者が尻込みする状況があるとみられ、市は路盤土木工事と軌道部分に分割、軌道を後回しとし、路盤をさらに外回りと内回りに分けて3度目の入札を行ったものの、入札価格が予定価格の上限を超え、3度目の不調となった。そのため規定に基づき3度目の入札参加者を対象に随意契約に移行。結果的に5月9日に外回り、内回りとも舗道工業(札幌)と契約。路盤については、一応一件落着した。
 次に軌道敷設工事が必要となる。6月下旬には軌道工事の入札を行う予定だったはずだが、それがもたついている。市交通では150万円以上の工事は一般競争入札が原則。しかし、建設業界の人手不足が深刻。工事の特性から道内では業者がJR関連などに限られ、JR北海道の現状を鑑みれば、市電にまで手が回らない可能性が高い。入札を実施しても不調となる心配が強いというのだ。
 地方公営企業法などで、前回のように3度の不成立が続いた場合の他、技術的に1社しか業者がない場合は随意契約ができる。他に、緊急性があり入札できない場合も随契が可能だが、これは当てはまらない。随契をする場合、「1社しか対応できない」ことがカギになる。しかし、現状をそのように決めつけられるか、となれば疑問だ。
 市は、全国の軌道工事が可能な数十社に聞き取りを行っているという。その結果、入札参加の意思を持つ業者が1社しかなければ、随契も許される。しかし、「札を入れる業者はないかないか、さあないか」とやる行為はまともとは言えない。「何か事情があるようだから、手を出さない、遠慮する」ことを推奨しているようにも見える。逆に、意思表示が1社だけなら、交渉は「売り手有利」だ。予定価格内で契約する、といっても、予定価格で収まらなければ、発注を取りやめるわけではないだろう。官製談合みたいな、怪しげな話だ。
 そんな場合、「役所流儀」で杓子定規にことを運ぶのが1番安全な方法のはず。路盤工事と同様にまずは入札をやってみるのが筋だ。不成立を3回繰り返し、最後には随契となるのはやむを得ない。
 それを市がやりたくない理由は、来春とされる開通をずれこませたくないからだ。しかし、なぜ来春開通なのか。一般市民には、役所流の四角四面さ以外の理由は見当たらない。このループ化は、路面電車が道路の歩道側を走るサイドリノベーション方式と合わせ、上田文雄市長の「趣味」を大きく反映されている。本人が立起するか、後継者を擁立するかは別として、来春の市長選挙までに開通して「実績喧伝」になることが、大きな要素だ。
 路面工事を発注してしまっているので、軌道だけを先延ばし、とは行かないのだろう(それでも別に構わないが…)。路盤工事発注がもたついたタイミングで、計画を先延ばしする英断が必要だった。上田市長は、なぜそうしなかったのか、役所流の理屈でなく、市民が納得できるよう、ていねいに説明する責任がある。

 <続報> 札幌市は7月25日、市電のループ化部分の開通が2015年10〜12月にずれ込むと発表した。年内に路盤土木工事が終了、軌道敷設は雪解けを待って来春着工する。異なる業者が同時並行で工事を進めれば、事故などが発生した場合、安全管理上の責任所在があいまいになる、との理由。総事業費は現在の24億8000万円より膨らむ可能性がある、としている。

■すんなりいくのか、札幌市電の軌道工事 (14.06)
 来春開業目指し、6月下旬に入札実施

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 3度の入札不調を経て、随意契約で路盤土木工事が進んでいる札幌市電のループ化。市は6月下旬に軌道敷設工事の入札を行うが、スンナリいくのか、不安要素が否定できないようだ。
 市電のループ化は駅前通の「西4丁目」ー「すすきの」間の道路外縁で軌道延伸するもの。当初は路盤、軌道、停留場移設をセットで入札した。しかし、今年1月末の入札では金額が予定価格の上限を上回ったため不調、3月上旬の2回目入札は工事実績などの参加条件を緩和したものの、入札がなかった。
 工事が夜間となり、全国的に建設工事が増加する中で人手不足が深刻で、業者が尻込みする状況がある。市は入札に参加しやすくするため、路盤土木工事と軌道部分に分割、軌道を後回しとし、路盤をさらに外回りと内回りに分けて3度目の入札を行った。それでも入札価格が予定価格の上限を超え、不調となった。
 市は規定に基づき、3度目の入札参加者を対象に随意契約に移行。結果的に5月9日に外回り、内回りとも舗道工業(札幌)と契約した。外回り8000万円、内回り8200万円という。
 土木工事が始まり、6月下旬には残る軌道敷設工事の入札が予定される。そこで、その軌道工事の入札がスムーズにいくのかが焦点となる。一般論としては、軌道工事を得意とするのはJRの工事に実績がある業者だろうと見られる。札建工業、北海道軌道施設工業など、JR北海道の子会社がある。
 と聞けば、取引先からの裏金、廃レールを処分した金の不明朗処理など、両社が良くないイメージでマスコミを賑わせた記憶が新しい。北海道軌道施設では新たにレールのデータ改ざん問題が表面化した。ただ、同社は仕事の9割程度がJR北海道からの下請けだから、外部からの受注に参入する可能性は低そう。JR北海道の安全見直しに関連して、子会社としては当然、全面的に親会社に目を向けることとなる。両社に限らず、新幹線関連工事もあり、建設業界が札幌市電ループ化の軌道工事に手が回るのかどうか、注目されるのだそう。
 ループ化は上田文雄市長の「天の声」で札幌市交通局が取り組んでいる。開業予定は2025年春とされ、上田市長は「4月1日から新しくなったぞ、と言えれば1番いい」などと発言している。入札不調による着工の遅れなどで影響も予想され、しかし、工事を分割したことで、遅れを取り戻せる可能性もあるとか。今のところ、確たるものはないが、1カ月程度の開業遅れも含みとされている。
 それでも、来春の札幌市長選挙時点では、ループ化が実現し、一般市民の見た目には札幌中心部の街並みが一新している可能性も残る。そうであれば、上田市長の4選出馬はかなり可能性が消えている状況だが、後継者陣営にとってはプラス要素。上田札幌市政に強い反感を持つ建設業界だが、かといって、みんなで入札不調を画策し、市電ループ化開業を妨害!?するわけにもいかない。  

■上田市長公約案件の市電ループ化工事、再入札も不調 (14.03)
 札幌市交通局、3度目の入札成立に奮闘

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 1月末に入札不調となった札幌市の市電ループ化工事の再入札が3月13、14日に行われ、応札がなかったためまたも不調。上田文雄市長の公約案件で、反対論を押し切る事業であるだけに、事業主体の市交通局が本腰を入れて再入札に臨むと見られたのだが…。
 工事内容は市電の「西4丁目」と「すすきの」の間をつないでループ化、新設区間は道路の両サイドに軌道を設けるサイドリノベーション方式。「西4丁目」と「すすきの」の停留場を改修する、1月30、31日の入札では、応札額が予定額を上回ったため不調となった。そのため、参加要件を緩和して3月13、14日に再入札、しかし今度は1件も応札がなかった。
 市交通局では今年度の入札の約4割が不調となっており、市電ループ化工事もその1つ、やむを得ない結果、という受け止め方のようだ。道内建設業界では東日本大震災の復興、北海道新幹線関連、JR北海道のトラブル対応などで土木工事が大幅に増えている。資材や人件費も高騰、労働力が手薄になって、都心部での夜間工事となれば人集めが難しい、など入札環境が悪化していることは確かだ。
 市電延伸・ループ化工事は上田市長が熱を入れる「特別案件」であるはず。といって、交通局現場でそれだけを予定価格、条件などを特別甘くし進めるわけにもいかないのだろう。しかし、2度の入札不調の「格好悪さ」は否めない。  本来は来年3月24日完成とされ、ゴールデンウイークには札幌中心部の街並みが一新しているはず。
 市は4月中に3度目の入札を実施して5月には着工したい考え。別発注する予定だった関連工事を抱き合わせにして工事額を膨らませる、逆に工事をコマ割りして入札に参加しやすく、工期の短縮を図る、などを検討する。軌道敷設には約6カ月を要し、来春開業ののためには4月中の受注業者決定がタイムリミット。「2度あることは3度」とならなければいいが…。もしも次も不調なら、一旦頭を冷やし直して、サイドリノベーションを諦め、道路中央に軌道を敷設する方式に見直してはどうか。

■市電延伸・ループ化工事、入札不調で完成の遅れもノ (14.03)
 上田文雄市長の公約案件だが、建設業界はクール

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 札幌市交通局が発注する路面電車ループ化軌道工事が、2月3日開札の結果不調となって1カ月を経過。交通局は再入札の準備中だが、まだ期日が確定していない。本来なら2015年3月24日完成予定とされたが、遅れる可能性が出てきた。
 この工事の入札は1月17日付で公示され、受付期間は同月30日から同31日まで。2月3日午前10時開札とされた。入札方式は制限付き一般競争入札で、事後審査のため、落札通知は2月13日だった。
 最近マスコミで公共工事の入札不調続出が報じられるところ。市電ループ化工事も不調となった。本来なら今頃ごろ札幌中心部の「4丁目通」で樹木移設などの工事が行われていたはずだが、入札不調によって当然ながら動きがない。
 工事概要は中央区南1条西4丁目の「西4丁目停留場」?南4条西4丁目の「すすきの停留場」間の土木工事。ループ化に伴う軌道新設及び既設路線の複線化、乗降場の改築など。区間は約400メートル。道路両側の歩道沿いを走るサイドリノベーション方式で軌道を設置する。狸小路部分では南進する外回り線をサンデパート前、北進の内回り線はアルシュ前に停留場を設置。現在単線になっている「4丁目停留場」部分は複線化するが、停留場は外回り線を現行のままの道路中央とし、内回り線は4丁目プラザ前に新設する。「すすきの停留場」部分も複線化する。工事には樹木の移設も含まれる。
 交通局では再入札の準備中というが、具体的な日取りなどは未定。入札不調から1カ月経ており、一連のタイムスケジュールがずれ込むことはやむを得ない。25年3月24日完成予定についても、変更になるのかも未定。しかし、担当者は遅れることを否定もできない状況だ。
 上田文雄市長の公約案件として反対の声を押し切って進める市電の延伸・ループ化だが、建設業界はクールに赤字工事は敬遠。もしも次回入札も失敗なら何とも格好がつかない。交通局も慎重になっているのだろう

■市電ループ化前提に、タクシー乗降、荷捌き実験 (13.11)
 タクシー利用弱者に冷酷、作業員に過重労働、事故の危険さえ
(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)

 札幌市が2015年の都心部市電ループ化を前に、線路が道路の両サイドに敷設される札幌駅前通でタクシー乗降、荷捌きができなくなることを睨み、南2条、南3条通りに乗降場、荷捌き場を設ける実験中。
 駅前通の市電ループ化予定区間には現在4個所のタクシー乗り場があり、線路が敷設されれば使えなくなる。また荷捌きも全面的に不可能になる。そのため、南2条、南3条通にタクシー乗降場、荷捌き場の設定が必要になることは明らか。そこで11月5日から17日まで、南2条(北側車線)、南3条(南側車線)の駅前通を挟んだ東西に2個所ずつ、合わせて8個所の乗降場、荷捌き場を設定して実験を行っているところ。
 タクシー乗降専用、荷捌き専用、タクシー・荷捌き供用のスペースを設定した。それぞれのパターンを示す看板を設置。また実験期間の前半はスペースの路面上に点線を引き、後半はスペースとスペースの間にバリケードを儲け1車線減少させる。実験時間はタクシーについては7時〜19時、荷捌きは場所により7時〜10時、7時〜17時のパターンを設定してある。
 実験期間中はもちろん駅前通や南2条通、南3情通の指定区間以外でのタクシー乗降、荷捌きはできない原則。今回の実験は1回目で、14年1月に2回目を行う予定。
 中心部で駅前通に軌道を敷設し、4丁目とすすきのを結んでループ化する市電路線延伸につては、特にサイドリザベーションという軌道を道路の歩道側に敷設する方式に反対の声が強いのを、札幌市が押し切るものだ。駅前通でのタクシー乗降、荷捌きは不可能となり、何らかの形でタクシー、荷捌き対策をしなければならない。実際にループ化が実現すれば、実験と似通ったスペース、時間帯指定になることは十分に想像できる。今回は実験だが、それでも当然ながらもタクシー、荷捌きの業者らから不満の声が上がっている。
 荷捌きについては、限られたスペースでスムーズな作業が出来るのか、が問題。指定場所にトラックを駐め、そこから商店などには台車による作業になる。荷物が多ければ何度も行き来する。道路の反対側に渡るだけでも信号待ちもある。トラックの停車時間が長くなる。作業員には過重な肉体労働を強いるものだ。作業を急ぐあまりに事故が誘発されなければいいが。早朝、深夜に作業をするとなれば時間外労働の問題が出る。業者にとって経済的負担も発生する。
 タクシーの場合も、目的の場所に直接横づけできない。利用者にはお年寄り、健康・肉体的な弱者が多いはず。そんなことは、簡単に想像がつく話だ。指定された乗降場からは歩くなり、車いすを利用するなりご自由に、というやり方と言える。市電を利用できる地域の限られた市民だけが便利になる。新式車輌導入で観光客にも見栄えが良くなる。それより、他にやるべきことが山積しているはずだ。
 しかし、市が行う実験は上田文雄市長が「天の声」を発したループ化実施を前提にしたもので、「いろいろ問題があってまずいので取りやめる」という結論はあり得ない。  ♯♯

■駅前通りで「自転車押し歩き」社会実験 (13.07)
 市電の歩道側走行・ループ化で「邪魔者」の自転車は走るな!

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 札幌市が駅前通りで「自転車押し歩きの社会実験」を実施中。7月10日から19日まで、南1〜4条通の東西両サイドの歩道で行うもので、昨年に続いて2回目。実験結果によって押し歩き推進地区の必要性を判断するというのだが、この区間の車道左端を市電が走る延長・ループ化により、駅前通りの交通が複雑になることが根底にある。市は強引に施策を進め、市民に不便を強いて、マナー向上を訴える図式だ。
 駅前通りは現在自転車の歩道走行が認められている。自転車は車道側に寄って徐行する。歩行者の妨害をしないことが大原則だ。そうは言っても、歩行者にとって自転車は危険で煩わしい存在。かといってこの区間で自転車が車道を走るのも非常に困難だ。歩道での歩行者と自転車のスムーズな折り合いが望ましいことは確か。市は実験期間に約20人の「押し歩き隊」を編成、押し歩きを呼びかけ、歩行者、自転車利用者に意識調査を行う。
 2012年に札幌市がまとめた「自転車のあり方」には「ネットワーク性に配慮しつつ、自転車の“とおりみち”を明確にすることで、歩行 者との分離を進め、歩行者・自転車それぞれが安心・安全に利用できる道路空間を創出すべき」などとされている。しかし、駅前通りのような人の流れが多い場所では、同じ平面上で自転車と歩行者を分離することは無理だ。そこで自転車は押し歩きを原則とする方向が見えている。
 それにしても、社会実験の区間設定は、路面電車の路線延伸、ループ化の区域そのままだ。「サイドリザベーション」と称する軌道が車道の左端、つまり歩道寄りを走る方式で、15年開業予定。(「でんまが」はサイドリザベーションには一貫して反対してきた。)
 市電が道路左端を走ることで、自転車は車道を走れなくなり、歩道を通るしかない。押し歩くにしても、歩行者に配慮すれば原則は車道寄り通行だろう。ところが狸小路に市電停留所が設置されるので、歩行者と自転車の輻輳がひどくなる。南1条と南4条では、道路中央を走っている電車が道路左端に向けて右左折、あるいはその逆方向に曲がる。歩行者、自動車、電車用の信号が複雑になり、危険性さえある。その状況の中を歩行者と自転車押し歩きが輻輳する。交差点のスクランブルはどうするのか。電車、自動車を止めて行うとすれば、狭いレーンの中で車両の信号待ちが長くなり、渋滞につながる。特に冬季間はどうなるのか。
 色々な問題があるが、どうするのか結論は出ていない。そんな手探りの中で、「自転車の押し歩き社会実験」が行われている。歩行者にも、自転車にも、自動車にも現状よりいいことはなさそう。サイドリザベーションを強行、市民に不便を強いておいて、「自転車は走るな!」とマナー向上を訴えるのが趣旨だ。

■札幌市が広報誌で「路面電車とこれからの札幌」をPR (12.06)
 「西4丁目」〜「すすき」結ぶループ化は2015年開通、だが…。

(「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。)
 札幌市が「路面電車活用計画」をまとめ、概要を市民にPRしている。計画のうち、「西4丁目」?「すすきの」停留場の約400メートルを結ぶループ化は2015年開業の予定。
 札幌の路面電車については2005年に存続を決定、同年さらなる活用を目指し学識経験者による検討会議を設置した。検討会議は06年、「大通・すすきの・札幌駅周辺の3地区を結ぶよう延伸すべき」と提言。10年に市は延伸の検討地域として「都心」「創成川以東」「桑園」の3地域を設定した。それ以降パネル展や市民会議で市民から具体的な延伸ルートについて意見を集めてきた。その結果、今年4月に路面電車活用計画を完成している。  札幌市はこのほど「広報さっぽろ」6月号で「路面電車とこれからの札幌」として、計画概要を紹介した。
 そのうち、ループ化は建設費約19億円を投じ、駅前通の「西4丁目」から「すすきの」停留場までの約400メートルを結ぶもので、開通は15年春。新規区間は電車が道路の歩道側を走る「サイドリザーべーション方式」とし、狸小路に設置される新停留場では歩道側から乗り降りできる。新設停留場は都心の街並みにふさわしいデザインで、観光情報やイベント情報などが得られる仕組みにするという。
 15年までに新車両3両を導入、乗降口を低くして停留場との段差を少なくし、誰でも利用しやすくする。車両の全長を伸ばし、定員を現在の60人より2割程度増やす。さらに23年までに運行車両30両のうち半分程度をデザイン性の高い低床車両とする。
 問題は経営状況で、乗客減などで10年度は約8000万円の赤字。今後設備更新などで24年までに約25億円の費用がかかり、現在の路面電車収入だけでは困難だ。そこで市が施設を保有しながら、運行を他の事業者に委託するなどの経営形態見直しを検討。当面は非常勤運転手を活用して人件費を15%程度削減する。さらに、今後の収支や地下鉄、バスなどの運賃水準を踏まえ15%程度値上げを検討する。ループ化や新型車両の導入など、新たな設備は国の補助金制度を活用、税負担により実施するが、車両運行や、工場・車庫などの施設の維持・管理は運賃などの収入から負担する。  それらを前提に、20年までは赤字が続くが、21年以降黒字化する見通し、とされる。人件費については現在の年間約7億5000万円(退職手当を除く)から10年間で約1億6000万円の抑制を見込んでいる。
 「広報さっぽろ」に掲載されている路面電車が走る駅前通のイメージには、札幌市が推奨しているはずの自転車の姿が見えない。自転車は車道左端走行が原則だが、そこには路面電車の軌道があるので無理。現状では、この区間は自転車の歩道通行が可能で、市の説明では原則的にそれを蹈襲するという。通常自転車レーンは歩道の車道寄りの端だが、停留場があるところはそれも無理。ではどうするのかが検討課題だ。事実上この区間は自転車通行が疎外されることとなるのか。都心の一部のみが「サイドリザーべーション」であることは、市にとって譲れないない一線のようだ。


■南1条通りの市電延伸に関心薄い市民の反応  (12.01)
 北海学園大学の調査、西3−1丁目延伸構想に

 札幌都心の南1条通再開発構想について北海学園大学が市民意識を調査した。市電については、地下歩行空間が設けられる場合は「市電を通す」は12%に止まり、地下道がない場合でも「市電敷設」は17%に過ぎなかった。この再開発構想には上田文雄市長も乗り気。構想にある市電の西3丁目−1丁目の延伸は限定的で中途半端な区間であることは否めないが、市民から市電延伸の要望が少ないことを示唆しているのではないか。
 南1条通再開発は地元商店街有志が長年かけて構想を詰めてきたもの。これを受け、上田市長は昨年の選挙で3選を果たした後、今任期中に着手する方針を明らかにした。構想は南1条通りの西3ー西1丁目までに新たに地下歩行空間を設置、地上は車の乗り入れを禁止、路面電車を通す、などを骨子としている。
 北海学園の鈴木聡士准教授らがこの構想の交通環境について市民意見を調査したところ、市電については先のような結果となった次第だ。
 札幌市の市電に関する考え方は、まず南1条と南4条の西4丁目で途切れている区間を、4丁目通り上で南北に結びループ化する。これには多くの市民が賛同できる。延伸については「都心地域」「創成川以東地域」「桑園地域」について検討。そのうち「桑園」、「都心」については単独では収支の黒字が見込めない、「桑園+都心」「創成川以東+都心」についても、将来的な黒字が見込めない、とされる。つまり延伸は「創成川以東」が現実的という方向性だ。
 とは言え、サッポロファクトリー、苗穂方向への「創成川以東」の延伸について、市民の要望がどのくらいあるのか、もっと客観的な調査が必要なはず。札幌市が調査をやれば「延伸ありき」と言わなくても、市民側から心理的に市の意向を忖度した回答が出る危惧がある。大学の研究者らが客観的な立場から調査する方が、より冷静に市民意識を把握できるのではないか。
 少なくとも南1条の3ブロックの延伸に関しては、市民の要望は10数パーセント止まりだと判明した。残り80数パーセントの市民のうち「反対」「どちらかといえば反対」「どちらとも言えない」はどんな数字なのかが興味深い。さらに「創成川以東」について具体的区間、ルートを設定して市民意識を把握するべき。手法としてこれまで市がやってきた会議、委員会、懇談会などでは主催者側の誘導が成り立つので、客観性に疑問が出る。誤魔化しはなし、を願いたい。 

■市電のデザイン化、延伸はお年寄りや障がい者に本当に必要??  (11.07)
 投資を最低限に止め、大切な財源を次世代へ贈るべき

 札幌市は9月に市電のデザインを考える検討会議を設置する。市のまちづくり方針の中に、「総合的な交通計画を策定し、公共交通機関を軸とした交通体系の確立を図るとともに、路面電車の延伸…云々」とあり、市電のループ化、延伸が上田札幌市政の方針。市電の活用に向けた具体的検討を進め、今年度から高齢者や障がい者にも利用しやすい新型の低床車両導入に向けた検討を実施する。
 上田文雄市長は7月25日の記者会見で「路面電車は、都心の回遊性を高めまちの活性化を促すほか、デザイン性の優れた車両、あるいは電車停留場などが通りの個性を演出するなど、魅力のあるまちづくりにも大きく貢献するもの」と発言。車両や電停のみならず、案内サイン、路面電車の活用策、利用促進に向けたPR方法など、ソフト面も含めたトータルデザインとして検討を進めていく、という。
 デザイン性に優れた低床車両は、確かに格好いい。札幌は折角路面電車が走るまちなのだから、そういうものがあれば、まち並みが映えるかもしれない。しかし、どうしてもなければならない,というものではない。基本的に必要なのは人を運ぶ公共交通の機能だ。「プラスアルファ」の部分はなくても我慢できる。
 お年寄りや障がい者にやさしい「低床車両」も、聞こえはいいが、それが本当に高齢者や障がい者の生活に潤いを与えるのだろうか。低床車両が乗り降りに楽だと思う人たちは、自宅や訪問先から公共交通機関までの歩行にも難儀するはずだ。路面電車がいくら乗り降りが楽になっても、そこまで行き来するのが辛い弱者にはあまり意味がない。公共交通から弱者を締め出せと言うのではないが、そういう人たちにはもっと必要な別なサービスを提供すればいい。現実に公共交通機関を利用するのは元気な人たちだ。もちろん元気な人たちをマイカーから公共交通機関や自転車に誘導することには異存はない。
 上田市長がいう「誰もが利用しやすく、市民に愛される、札幌にふさわしい魅力的な路面電車の誕生」ー言葉は美しい。しかし、「誰もが」といっても、利用するのは札幌市の一部に過ぎない沿線区域に生活する一部の元気な市民に過ぎないのだ。「魅力的」にもいろいろな感じ方がある。人口減、高齢化のなか、札幌の街並みはこの先そんなに大きく変わるのだろうか。古色ある街並みにレトロな市電が走る姿だって魅力的だ。
 現在ある路線は活用すべきだ。ループ化は利便性を大きく向上させる。しかし、路線延長は大いに疑問。札幌駅などへの延伸は、市電を利用する圧倒的多数の「元気な市民」なら他の交通機関を使うとか、地下通路を歩けばいい。延伸は「絶対必要」なものではない。現状でも札幌市民は市電に関してそんなに不幸だと感じてはいない。
 なくても我慢できるものなら、最低限に止めるべきだ。そのための費用を大切にとっておいて次世代に贈ることは、絶対に無駄にならない。  

「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。

■市電延長、札幌市は西2丁目ルートに傾斜 (11.02)
 市長選前に経済界の反対に配慮、単線方式で

 札商など経済界が反対する市電路線の延伸に関しても、自民党が担ぎ出した本間奈々氏は白紙化する方針だが、上田文雄市長は「各方面の声を聞き慎重に検討する」と多少トーンダウンしたニュアンスながら「やらない」とは言わない。それでも札商が地下鉄・地下歩道との3重投資だとして強く反対する4丁目ルートから2丁目ルートにシフトする方向が見えだした。
 4月の札幌市長選に向け、経済界などでは現職・上田市長優勢が伝えられる。前回上田市長を強く批判して対抗馬・清治真人氏を支援した経済人らは今回はこれといった動きを見せず、どちらかといえば現職に顔を向ける動きがみえる。自民党の牙城と言われた札幌商工会議所でも有力議員の1人で総務委員長を務める光地勇一札幌中央アーバン社長が上田選対代表世話人になり、向井慎一前専務理事も世話人に加わった。「札商も上田市長にシフトだ」と言われる。 経済人らの肚の中は「対立候補を支援して難しい選挙を戦うより、現職を支援する代わりにこちらの要望も聞いてもらう」という大人の現実路線だ。
 札幌市と札商の協議の中で、最近札幌市が臭わせているのが2丁目ルートによる南1条から札幌駅前までの市電延伸。西4丁目から南1条通条を西2丁目まで伸ばし、そこから北に曲がるコースだ。2丁目通は4丁目より路幅が狭いが、単線を敷設し、必要個所に交差部分を儲けるという案だ。これなら確かに地下鉄・地下歩道との3重投資の色が薄れる。もちろん交通混雑、特に冬季積雪時の渋滞などが懸念されるが、4丁目通を通すよりましであるとは言える。
 新人市長候補となる本間奈々氏は、札幌市政が市債残高を減らしたと言っても公共事業を極端に抑制したひずみが大きいと批判。創成川通に高速道路乗り入れを図るとしている。上田市長も同じことを打ち出し、この事案は市長選の争点にならない。目に見える公共事業の争点としては市電延伸がシンボルの1つになりそう。
 「でんまが」は現路線の存続は必要、南1条ーススキノの連絡によるループ化も意味があると考える。しかし、市電の利用者は沿線の狭い範囲に限定され、そこから外れた地域の住民にはほとんど価値がないことを指摘したい。
 札幌市は市電延伸に合わせ超低床電車導入を意識している。お年寄りや体が不自由な人も乗り降りしやす「優しい電車」がポイントだろう。しかし「現在のようなステップを上下する市電が不自由、超低床電車は便利」と思う市民は、電停まで歩ける距離が限定される。市民に優しくても、結局は利用者の範囲が狭い。札幌市の財政が裕福ならいいが、厳しい予算の中では、市電延伸は優先度が低いはずだ。 ♯♯


■少数シロウト意見を「延伸ありき」に誘導するまやかし作戦 (10.12)
「路面電車の活用を考える市民会議」が12月19日上田文雄札幌市長に意見書を提出した。市電の意義、課題をまとめたもの。受け取った市長は「年度内にはどのルートにどう延伸するか提案できるよう整理したい」と語り、相変わらず「ルートはさておいて延伸ありき」の態度を見せている。
 「市民会議」は無作為抽出した市民5000人に案内文を送り、希望者の中から100人を決定。11月〜12月に3日間会議を開いた。10月に開催した30人規模の市民会議の意見、観光客、商業者などの視点を踏まえ、路面電車の課題、可能性を論議したという。市は「市民会議で出された意見は今後の札幌市の検討に活かしていく」というのだが、市民190万人中30人や100人の意見をそんなに重視するのか。市側の都合がいいように論議を誘導するには、人数が少ない方がいいのだろう。
 それでも会議メンバーからは、観光活性化や高齢者の外出を促す手段として可能性を評価する声が出た一方、採算性への疑問も指摘された。さらには「延伸への反対意見を言いずらい雰囲気があった」と会議への不信感も指摘された。
 延伸ルートについて、都心、桑園、苗穂の3地区を需要見込みなど15項目の観点から評価、参加者の投票では9項目で都心部が最も高い評価を得た。そして前記のように上田市長は「年度内にはどのルートにどう延伸するか提案」と語った。「でんまが」がこれまで指摘したが、どうしても新たに公共交通機関が必要な地域があれば、そこに地下鉄、バスや他の輸送手段を検討、その中で市電が候補となるなら公正な順序というものだ。それをルートは未定だが、市電に特定して路線を延伸したい、さてどの地区にしましょうか、というのが今やっている札幌市の進め方で、本末転倒もいいところなのだ。
 「高齢者の外出を促す」といっても、札幌市全域のなかで市電を利用できる限られた地域の高齢者だけ優遇する理由は何か。「低床式の車両を導入して乗り降りをしやすく」も結構だが、電停まである程度の距離を歩ける利用者にとっては、市電の少々の段差はそれほど問題ではない。いずれにしてもその利便を享受できるのは限られた一部の市民。であれば、より多くの市民のために他にやることがいっぱいあるのではないか。
 都心が有力というが、間もなく札幌駅から大通まで地下歩道がつながり、地下鉄もある。同じルートに市電を通す必要性はない。上田市長は地下歩道さえ要らないと考え、余計な公費を使って市民意見を調査したはずだ。「格好のいい車体の市路面電車が走ればいいなあ」程度の発想はやめてもらいたい。

■サピカが13年から市電、バス3社と供用化。一段と便利に!!!  (10.11)
 2013年度から札幌市営地下鉄のIC乗車券SAPICA(サピカ)が市電、北海道中央バス、ジェイ・アール北海道バス、じょうてつの3社でも使えるようになる。これに伴いウィズユーカードが廃止され、ちょっとタッチするだけで改札や乗り降りが早いサピカに統一される。札幌の交通が便利になる。
 札幌市、バス3社の間で設置した「札幌ICカード協議会」が12月10日の臨時総会で基本合意する。今後カード利用などを記録する専用サーバー、バスに設置するカード用端末などを開発、実用開始は13年春ごろと想定される。
 導入には40億円程度の経費が見込まれ、国の社会資本整備振興交付金、市の補助金で30億円を確保、バス3社の出費を抑える。市電への導入経費6億円も交付金を活用し、市の支出を抑える考えという。
 現在の地下鉄とバスの乗り継ぎ割引制度では最大100円安くなり、うち20円がバス会社負担。3社合計では年間6億円に上る。サピカ導入には新規投資がかかり、割引負担をバス会社が嫌うことが障害だった。そこで札幌市は11年度からバス会社の負担を市が肩代わりする方向で調整中。これでバス3社が協調しやすくなった。
 現在はサピカとウイズユーカードを併用しているのをサピカに1本化して、ウイズユーカードは廃止する。ウイズユーカードには最大15%(1万円券の場合)のプレミアムがあるが、サピカは1率10%。サピカ移行によって利用者には最大5%分の負担増となり、市民感覚では決して小さくない。またサピカはJR北海道のIC乗車券・Kitaca(キタカ)との相互利用にはシステム導入経費問題が未解決で実現のめどはない。
 賢明な読者はここまで読んで「改札がちょっと便利になるだけの話で利用者にはメリットなし、デメリットあり。導入経費だって結局は市民の負担。なんだそれならサピカなんか要らないじゃないか。キタカやそれ以外のICカード、携帯端末などの供用ができるまで腰を据えて取り組むべきだ」と思いますよね。
 結局サピカ導入は拙速だった。それを糊塗するのに、また拙速を重ねている。オバカの上塗りです。

■少数市民を集めて「市民会議」と誤魔化し・まやかし作戦 (10.10)
 札幌市は10月16日、17日の日程で路面電車の活用方法について一般から意見を聴く「市民会議」を開催。無作為抽出した市民2000人から参加者を募り20−70歳の各区世代5人ずつを選び、1日目は実際に市電に乗り、2日間はホテル会場で意見を交わしました。
 意見の中には延伸地区に「都心」を選んだ意見、「都心は見送るべき」「現行の路線をループ化」「道庁ーサッポロファクトリー、サッポロビール園」なども。  延伸実現について「頑張って欲しい」の声があった一方、「市電利用者増、赤字経営の課題を改称した上でに開ければ延伸はあり得ない」「赤字経営の市電をさらに延伸する理由が分からない、延伸ありきの議論だ」とする冷静な意見も。
 「市電は札幌のシンボルで、延伸によって市の活性化を期待」の声もありましたが、これは深く考えたものとは思えません。市側が市電試乗、ホテル会場での会議、など「楽しい雰囲気」づくりにを行ったことが影響したのではないか、と思えますね。市は11がtぐ12月には100人規模の市民会議を開き、さらに広く意見を聴くというが、市民190万人中100人の意見が「広い意見」とは言えません。札幌市の誤魔化し、まやかし作戦が見え見えです。

■上田文雄札幌市長は2010年9月1日付で「真夏の夜の夢 札幌2030年」のエッセーを発表、市電の路線延伸を含む将来像を語っています。上田市長の夢は、あくまで夢であればどのようなものであろうと個人の自由ですが、それを札幌市政の方針とするのなら、いろいろと疑問があります。 エッセーの全文を紹介しながら、「でんまが」は延長に疑問を呈す立場から、注釈(赤字部分)を加えてみました。あなたは、どう思いますか。「でんまが」へのEメールまたは「でんまが掲示板」でご意見を募集致します。

 ▼Eメール=denmaga-desk@sdcom.jp
 ▼でんまが・掲示板はこちら

「真夏の夜の夢 札幌2030年」 平成22年9 月1日  
札幌市長 上田 文雄

 今年はお盆が過ぎても暑い夏が続きます。真夏の夜の夢、札幌の20年後の2030年に想いを巡らせてみました。  2030(平成42)年、みんな20歳、年を取っている。私も82歳。市長はとうの昔に辞め、老害と時たま陰口を言われながらも、弁護士としての役割を何とか果たしている(希望です・・・夢なのです)。
(その夢が実現すると良いですね。健康管理を怠りなく、お元気で…。)

 札幌市の人口は、いまからは、たいして増えない、いやむしろ減少傾向に向かうというのが一般的な予想ですが、日本全国これだけ暑くなると、涼しい(といっても昔の東京並みの暑さになるかもしれませんが、それでも熱帯のような本州に比較すれば数段涼しい)札幌には多くの人が移住してきていることでしょう。  でも、まちがいなく超高齢社会は到来しています。3人に1人は高齢者。介護・医療制度の充実はもちろんですが、高齢者が外出しやすいまち、車に頼らなくてもよい交通インフラが充実。
(現在より多少路線を延伸したとして、札幌のほんの一部地域を走る市電が「交通インフラ」と言えるのでしょうか)

 私は、市電に乗って、裁判所に行き、また、キタラに通う。
(あなたはそういう生活ができれば良いですね。大多数一般市民の生活パターンはまた別でしょう。)

 市電は、もちろん低床車両、サイドリザベーション(歩道から直接電車に乗り込むことができる)で乗り降りはとっても楽。まちを移動するための「横のエレベーター」といった感覚で、札幌の景観にマッチした車両が美しい。
(折角ある現在の路線はそのような姿になって欲しいと思います。ただし、できる限りけちけち作戦で費用をかけないことが絶対必要条件です。)

 市電の沿線は、今よりはるかに土地の高度利用がなされ、(そうは言っても、そのための市電路線周辺の建ぺい率・容積比見直し、高層化に伴う安全・安心インフラ整備など土地高度利用の施策が考えられていないのではないですか。そちらの方が先決問題だと思います。それでも、市電沿線に高層市営住宅を建てれば、随分家賃が高くなるでしょうね。)

 高齢者が暮らしやすいバリアフリー型のマンション等が立ち並んでいる。主たる住人である高齢者は長年の雪かきからも解放され、市電に沿って高齢者にやさしいまちが出来上がっています。 
(高齢者はみんな街中に集まれと言っても、非現実的ではありませんか? 「雪かきから開放され」のは、当然マンション管理費などコスト負担がかかる話ですね。経済的にそれができる人はごく一部だと思われます。)

 高齢者にやさしいということは、障がい者はもとより、若者や健常者には超やさしいまちということを意味します。
(少数派の経済力に恵まれている高齢者にやさしい施策より、多数派の裕福ではない人たちに優しい市政を期待します。)

 札幌の市電は、およそ100年前の1909(明治42)年に運行を開始した馬車鉄道に始まります。1964(昭和39)年には路線延長25キロ、札幌の交通インフラの根幹を担う市電の最盛期でした。しかしその後、札幌オリンピック(1972(昭和47)年)開催を機に、地下鉄が掘られ、バスと連携した交通インフラを基本として、札幌のまちは大きく広がります。市電は地下鉄と競合する区間が順次廃止され、1974(昭和49)年に現在の路線延長8.5キロとなりました。
(地下鉄を幹線とし、それにバスが連携する現在の形ではダメなのですか? 地下鉄開通に合わせ市電路線を削減したのは,間違っていたのですか?)

 そして、この秋、札幌の10年後、20年後を見据えた交通体系、まちづくりと市電のあり方について議論が始まります。ループ化と札幌駅との接続については、既に市民の皆さんからご提言いただいており、私も必要不可欠であると思いますが、具体的路線の場所や延伸の要否については、これから市民議論を重ねて決めなければなりません。建設費は、経営はどうしたらいいのか、様々な論点があります。できるだけ分かりやすい情報をお届けしながら、しっかり議論をしなければなりません。
(議論した結果、延伸をしない、という結論はあり得るのですか? “延伸ありき”では、議論の意味がありません)

 その際には10年後、20年後の札幌は、超高齢社会になっていることも考慮の対象としなければなりません。
(市電延伸は札幌の高齢化対策の重要部分にはなり得ません。)

 議論の過程は、ホームページ、広報さっぽろや新聞テレビ等の報道で市民の皆さんにお伝えしていきます。市民の皆さんにはどうか積極的に議論に加わっていただけますように。札幌市の財政はますます厳しくなりますが、工夫はあるはずです。
(先ず、現在の市電の収支をゆとりある黒字に転換すべきです。有効な方法の柱として、人件費を見直す「工夫」が可能なはずです。延伸するかどうかの議論は、それが実現してからでも決して遅くありません)

 20年後の札幌を議論しましょう。(もちろん議論することは良いことです。ただし“結論ありき”はダメですよ。)  8月29日から9月4日まで、中国・瀋陽市と上海市に出張します。瀋陽市では友好都市提携30周年記念行事等に、また、上海市では上海万博での「北海道の日」イベントに参加するためです。熱き中国を体感し、札幌の元気のもとにできればと思います。

札幌市長 上田 文雄

 


「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します。

■札幌市の市電延伸に札幌商工会議所が意見書 (10.09)
 総合交通体系での位置づけ、高すぎる人件費にも言及

 札幌市が路面電車の路線延伸を企図しているのに対し、札幌商工会議所が意見をまとめ、9月14日に札幌市に提出する。意見書は将来に禍根を残さぬよう投資効果を見定めつつ,中長期的な都市経営戦略に立って,幅広い角度から検証が必要、と指摘。札幌市がまとめた「札幌市路面電車活用方針」(2010年3月)に記載されている路線延伸等の事業化に当たって、課題・問題点への対応を促すもの。一部報道では、札商は路面電車延伸について腰砕けになっているとされるが、なかなか骨のある手厳しいもの。記述が少し長くなるが、「でんまが」読者には是非しっかり読んで頂きたい。内容は以下の通り。
<1総合交通体系における位置づけについて>
 元々札幌の路面電車は地下鉄開通時に基幹交通機関としての役割を終え、順次廃止されていった。市長期総合計画(1971年3月)で「将来全面的に都市高速鉄道に移行する」とされ、新長期総合計画(1976年11月)では「当面、都市高速鉄道の補助交通機関として存続させる」とある。路面電車の軌道は交通渋滞を招き、冬季は雪の問題がある。地下鉄・JRが基幹交通機関となった現在、もはや補完機能しかない。
 さらに現行の「第4次市長期総合計画」(2000年1月)では基軸となる大量交通機関を補完し有機的に連携するのは路面電車ではなく、バスネットワークとされた。路面電車は交通ネットワークというより“移動の楽しさを提供する”“都心の装置”としての位置づけでしかなく、市の総合交通体系の位置づけは極めて曖昧だ。
 その中「札幌市総合交通計画」策定に向けた審議が始められたが、本来こうした場で路面電車の総合交通体系における位置づけや,基軸交通機関や補完交通機関の役割分担、ネットワークのあり方などについて整理した後に,路面電車の方向性を打ち出すべきであり、今般の「路面電車活用方針」は性急な感がある。
 なお、路面電車からバスへの代替は困難としているが、前提として現在の路線をそのままバスに置き換えるためであり、バス路線のルート設定や乗客数に応じた柔軟な車両運用と運行頻度などの工夫により十分代替は可能だ。
<2経営面について>
「路面電車活用方針」では運行継続には老朽化した設備更新のため平成35年までに約58億円が必要となるばかりか、この設備投資によって生じる経常収支悪化による資金収支を補うため平成35年度までに約71億円の一般会計からの支援が見込まれるとされる。これを解消するため延伸・新設が必要であるとし、利用者負担増などによる黒字化を目指す方針を示している。
 しかし,運行継続には人件費を原因とする現在の高コスト体質を抜本的に解消し、現路線での経営改善・黒字化を図るべきだ。軌道事業会計の職員1人当たり給与は平均843万円(平成22年度予算、法定福利費除く)と市内民間企業に比べ突出して高く,人件費への対応なしには経営改善はできない。一般会計から赤字補填的に支援するのでなく、上下分離式により民間への移譲など経営主体の民営化を推し進め、経営責任と役割分担を明確にして公共交通の維持を図るべきではないか。
 「広報さっぽろ」7月号特集では,設備更新費用や延伸費用についてのみ記載され、現在から将来にわたる一般会計からの支援についての記載がなく、具体的な経営形態や経営手法も示されていない。これでは市民の理解と適切な判断が得られない。「さっぽろを元気にする路面電車の活用のあり方」(2006年9月)で「今後3年を目途に経常収支黒字転換を目指す」としながら、09年度経常収支が1億3300万円の赤字と悪化していることを考えれば,より厳密性が求められる。
<3街づくりとの関連について>
「路面電車活用方針」には延伸・新設により利用者増を図るとしているが、「コンパクトシティ」を標榜し、都心部への人口誘導を図るのであれば、創成川以東と同様、広義の都心ともいうべき現路線沿線にも停留所周辺の容積率増大など土地利用のあり方も含めたインセンティブを導入し、現路線の利用者増をはかることが先決。かつて路面電車沿線にあった学校や、交通局、中央保健所などの公共施設が次々と移転し,利用者減に拍車をかけた。この間新設された公共施設は中央図書館、札幌コンサートホールの他はほとんど見当たらない。利用者増に向けては,沿線地域の高度利用促進による域内人口増加や、公共施設・観光施設の再配置などによる域外利用者の増加による市電の潜在的利用者を増やすことが必要である。
<4環境対応について>
 路面電車について環境低負荷社会に対応した機能がうたわれているものの、環境対策面を考えるのであれば電気バスや燃料電池自動車により代替することが可能ではないか。きたるべき低炭素社会ではEVなど次世代型車の普及が拡大し,路面電車のみが環境にやさしい乗物とは言えない。技術の進展により架線や軌道に依存しない交通機関も登場するであろう中、幅広い交通機関の議論が求められる。軌道を利用する路面電車は、一度敷設してしまえば柔軟な路線変更ができないため,初期費用を投入するには慎重な検討が必要である。
<5延伸地域・ルートについて>
 都心部におけるループ化・延伸について、特に「札幌ー大通ーすすきの」の延伸は,地下鉄(南北線・東豊線)や地下歩行空間(駅前地下通路,ポールタウン)に対しての重複投資であり,投資効果・政策効果の視点から必要とは思われない。都心部における延伸は軌道の存在が道路容量を低下させ、交通の円滑化を阻害し、特に冬季は雪の問題があり、一層深刻になる。 「路面電車活用方針」と同時に取りまとめられた「都心まちづくり戦略」(2010年3月)では「駅前地下歩行空間により駅前地区からすすきの地区までの大規模地下ネットワーク構築により都心全体の回遊性の向上が期待される」とする一方、「新たな回廊やにぎわいを生み出す路面電車の導入など環境にやさしい公共交通の拡充を検討」としているが、大規模地下ネットワーク完成により都心全体の回遊性が向上するのであれば、多額の費用を要する路面電車の都心への導入は理解し難い。
 以上が札商がまとめた「札幌市路面電車活用法についての意見書」の中身。このスッキリした論点、論旨に対し、札幌市が真摯な対応を見せるかどうか、市民の目で監視する必要がある。それでも上田文雄札幌市政が路面電車延伸を強引に推し進めようとするのであれば、市民は来年4月の市長・市議会議員選挙で意見を反映させるべきだ。


「でんまが」の「政経コンフィデンス」欄より記事を転載します

■路面電車延伸に向け札幌市が世論誘導作戦 (10-06-08)
 区民センターでパネル展、フォーラムや市民会議

 札幌市は市電を活用したまちづくりに関するするパネル展を開始、順次各区民センターで行うほか、フォーラムや市民会議も予定、「延伸ありき」の構えがありあり。
 パネル展は6月10日の「路面電車の日」から14日まで中央区民センターで始め、7月末までに全区民センターで開催の予定。市電の現状と延伸候補とされる3地区を説明している。来場者にはアンケートを実施、市電延伸を呼びかける立派なパンフレットを配布する。
 他に「広報さっぽろ」7月号で市電の特集を組み、8月下旬には市電活用に関するフォーラム、秋には無作為抽出した市民による市民会議を開催する。市は年度内に延伸ルート決定を目指しているが、市民の賛否が分かれるところ。これに対し、「将来のまちづくりに必要不可欠」と市民に理解を深めさせるのが狙いだ。
 パネルやパンフレットにはリヨン(フランス)、ストラスブール(同)、アムステルダム(オランダ)などの街並みの中を走る路面電車の写真を大きく掲載してイメージ作戦。しかし、町や沿線の人口分布、利用状況、収支などは説明されていない。「環境に配慮」「魅力的な都市空間を演出」など情緒的記述だ。「実施には十分な市民の議論が必要。一緒に札幌の未来を考えましょう」としながらも、市民世論を延伸賛成へ誘導する下心がありあり。
 パンフレットにはQ&Aを掲載、「路面電車をバス転換してはどうか」「都心部で渋滞が悪化しないか」「都心部には地下鉄があり、地下道もできるので市電の利用者が減らないか」「専門家はどう考えているのか」などの疑問にもっともらしく答えるスタイルになっている。
 その中に「財政が良くない中で延伸しても赤字で借金が増えるだけでは?」という疑問もある。これに対しては「現状のままで延伸しても安定的な経営は困難。路線延伸に合わせ、経費削減など経営効率化、利用者の負担のあり方を検討することで、建設費用はかかるが将来的に赤字を出さずに自立的な経営ができる」と答えている。
 「利用者負担のあり方検討」とは値上げであり、「経営効率化」というなら延伸に関係なく今すぐ取り組むべき課題だ。それで十分に成果を上げてから延伸を検討するのが正しい順序のはずだ。「路線延伸すれば経営効率化を実施(延伸しなければ経営改善しない)」は論外である。
 そもそもある地域の輸送需要が大きく、どうしても公共交通機関が必要であることが前提となって、ではバス、路面電車、地下鉄、その他モノレールなどのうちどれが適切なのか、という順番になるのではないか。札幌市の進めているのは「市電延伸ありき」で、では路線をどこにするか、というのは本末転倒もいいところだ。
 ちなみに延長に必要な事業費は都心地域(札幌駅)=56億円(国庫補助18億円、札幌市負担18億円、事業者負担20億円)、創成川以東=50億円(国庫補助16億円、札幌市負担16億円、事業者負担18億円)、桑園地域=48億円(国庫補助16億円、札幌市負担16億円、事業者負担16億円)とされる。この資金で保育所など働くお母さんを支援する施設、困っているお年寄り対策など、どんなことができるのかもていねいに説明して欲しいところだ。   ♯♯